私は選挙がきっかけで、一市民として市議会の仕事をきちんと理解したいと思い、議会中継や議事録、公式サイトを一通り確認してみました。
けれど調べれば調べるほど、「結局、どこを見れば市議会の仕事が分かるのか?」
という問いに、はっきり答えられなくなっていきました。
資料はそろっていても、市議会で議員たちが何を議論しているのかが非常に見えにくいのです。それはなぜなのか?奈良市における問題点を考えてみました。
「ここを見れば分かる」と言えない現実

(※ここでは私の住む奈良市の例を挙げています)
市議会の情報は、確かに公開されています。
公式HPがあり、議会中継もあり、議事録(会議録検索システム)もあり、検索機能も用意されています。年に4回、しみんだよりと一緒に議会だよりが各家庭に配布されます。
それでも、市民として真剣に議事内容を見ようとすると、なぜか「全体像がつかめない」という壁にぶつかります。
なぜなら、今の情報はすべて
- 会議ごと
- 発言ごと
- 人ごと
に分断されているからです。
たとえば「子ども医療費制度」がいつから会議で議論されて、どういう経緯で今こうなっていて、これからの課題は何なのか、調べてみようと思ってもパッと欲しい答えは見つかりません。
色々な資料を何往復もしなくてはならず、「ちょっと知りたい」が許されないような空気を感じて、そこで多くの市民は、知ることを諦めてしまいます。
人単位では、まだ追える
議員個人については、まだ何とか情報を拾えます。
- 会議録検索システムの一般質問・代表質問(人名検索)
- 個人のSNSやホームページ
を辿れば、
「この議員は、こういう問題意識を持っているのだな」
という輪郭は見えてきます。
実際、私自身も選挙前に、それらを辿って議員一人ひとりの質問や発言を追ってブログ記事にしていきました。
でも、議案単位ではほぼ追えない
一方で、議案単位になると状況は一変します。
「この議案は何だったのか」
「どこが問題になったのか」
「どういう議論があり、どう決まったのか」
これを追おうとすると、
- 議案一覧(PDF)
- 会議録(全文テキスト)
- 委員会資料
- 本会議録画
など複数の資料を行き来する必要があります。
検索はできる。でも、分からない
議事録検索でフリーワードを入れると、確かに検索結果は出ます。
ただ表示されるのは、
「定例会 ○月○日-05号」
「厚生消防委員会○月○日-01号」
といった会議名だけがずらっと一覧表示されます。それをクリックすると、発言者とそのキーワードを含んだ発言が表示されます。
それらは会議の中の一部である会話を起こしたものですから、議案の要点や結論は表示されません。
しかも2026年1月現在では、たとえば「子ども医療費」と打った場合と「子供医療費」と打った場合、違う結果が表示されます。検索エンジンと違い、キーワード表記の揺れは加味されないようです。
結局、一つ一つ開いて、長い文章を読み、前後関係を探すという、とても手間のかかる作業が必要になります。
市民が知りたいのは「発言ログ」ではない
市民が知りたいのは、誰が話したか?発言が何個あって、何文字あったか?ではありません。
知りたいのは、
- この議案は、何のためのものか
- どこが争点だったのか
- どう修正され、どう決まったのか
- 今はどの段階なのか
という全体像です。
でも今の公開のされ方では、その全体像にたどり着くための道筋が用意されていません。
「分からない」のは、市民の問題ではない
ここまで調べて感じたのは、
私が分からないのは、理解力の問題ではない
ということでした。政治を知ろうとした一市民として、
- 見る気がある
- 時間もかけた
- 実際に調べた
それでも分からないなら、
市民向けに理解できる形で情報が整理されていない
ということだと思います。今公開されている資料は、市民のために用意されたものではなく、行政のアーカイブ用として用意されているもののように感じました。
本当の問題は「役割」ではなく「見えなさ」
市議会が仕事をしていないわけではありません。
議案を検証し、修正を求め、ブレーキをかけ、地道に調整を重ねている
はずです。
ただ、その過程が市民からほとんど見えないのです。
その結果、
- 「何もしていない」
- 「市長側が全部決めている」
- 「派手な発信だけが目立つ」
という印象が生まれてしまいます。
確かに議会の見える化はシステム変更やページ増設などとても手間のかかる作業です。毎日議案のことで一生懸命忙しい議員さんや議会の方々には荷が重いのも分かります。
でも、それを理由にいつまでも「見える議会」への進化を怠っていると、結局市民から「何もしてない」レッテルを貼られ続けて大損をするのは、市議会なのではないでしょうか。
本来あってほしい情報の形
市民としては、最低限こんな情報が一つにまとまっていれば助かるな、と思うことを挙げてみたいと思います。
- 議案の一文要約
- 今どんなことが問題視されて議案にあがっているのか
- どこが論点だったのか
- 今回はそれについて話し合ってどうなったのか
- 結果どうなったのか
- 今後どうなるのか
これが議案ごとに1ページで見られるだけで、市議会はぐっと身近になるのではないでしょうか。
いきなりここまでは無理でも、せめて市民に理解できる言葉で、議会の議案タイトルを一覧にしてほしいなと思いました。
市民が自分に関わりのある議案を検索したいときにすぐ分かるようなタイトルになっていることがベストなように感じます。
私もそうですが、そもそも多くの市民は、
- 今の奈良市の問題は何か?
- どんなことが議案として話し合われているのか?
という全体像が見えていない人がほとんどなのではないかと感じます。
全部の議案とは言わないので、せめて奈良市にとって今重要なトピック案件数件だけでも、上記のような議案ごとに1ページで見られる場所がHPに設けられてもいいのではないかな?と思いました。
(ごみ処理場クリーンセンターの移転問題・全小中学校エアコン設置問題など)
「答えが出ない」ことが、今回の結論
この記事を書こうとして、最初はこう考えていました。
市議会の仕事は、どこを見れば分かるのか?
でも調べた結果、「ここを見れば分かる」と言える場所は見つかりませんでした。
だからこの問いへの正直な答えは、
今の形では、明確に答えられない
です。
おわりに
市議会の仕事は、見ようと思えば見られます。ただし、見続けるための道筋がありません。
市民が市政に興味を持って理解や判断するために必要なのは、断片的な情報ではなく、全体像です。
その全体像にたどり着けない構造そのものが、今いちばんの問題なのではないかと感じています。
