2026年に入ってからのトランプ大統領の発言をきっかけに、「なぜグリーンランドなのか?」という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。私もその一人です。
地図で見ると、北極圏のはるか彼方にある氷の島。人口も少なく、世界の政治経済や普段の暮らしとは縁遠い場所に思えます。
そんなグリーンランドに、なぜデンマーク領であるこの島に米軍基地があり、アメリカが長年「守る側」に立ち続けてきたのでしょうか。
今回はこの疑問について、調べてみました。
グリーンランドは「北の果て」ではなく、戦略の要だった

グリーンランドは、北極圏にある遠い島というイメージを持たれがちです。
しかし地図を冷静に見直すと、この島は北米とヨーロッパのほぼ中間に位置しています。
現代では飛行機で世界中を移動できます。
そのため、「温暖化によって北極の海路が開くことは、そこまで重要ではないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ただし、ここで重要なのは「人が移動できるかどうか」ではないです。大事になのは、どれだけの物量を、継続的に、安定して動かせるかという点です。
世界の物流や軍事補給の大部分は、今も船に支えられています。
飛行機は速い反面、一度に運べる量やコストには限界が…。一方、船は時間はかかっても、圧倒的な量を運び続けることができます。
北極海が季節限定でも航行可能になるということは、これまで存在しなかった新たな選択肢が生まれることを意味します。
さらに、海と陸は「居続けられる場所」です。
港をつくり、人が滞在し、補給や監視、救難の拠点を置くことができます。通過するだけの空とは、役割がまったく異なります。
その交差点に位置するグリーンランドは、放置できない場所になってしまった島だともいえるでしょう。
なぜドイツではなく、アメリカが引き受けることになったのか
グリーンランドは現在、グリーンランドとしてデンマーク領に位置づけられています。しかし、防衛を担ってきたのは長らくアメリカでした。
その背景は、第二次世界大戦にさかのぼります。
当時、デンマーク本国はドイツに占領されていました。
一方、ドイツには北大西洋を越えてグリーンランドを実効支配する力も、それを維持する制海権もありませんでした。
もしこの島が無防備なまま放置されれば、敵国に利用される可能性があります。
そこでアメリカは、デンマーク亡命政府の同意のもと、グリーンランドの防衛を引き受ける判断をします。
この戦時の判断が、「主権はデンマーク、防衛はアメリカ」というねじれた構造の出発点になりました。
米軍基地は「好意」ではなく、アメリカ自身のため

グリーンランドにある米軍基地は、善意や好意で置かれているものではありません。
この島は、北極を通ってアメリカ本土へ向かう最短ルート上にあり、
ミサイルや航空機の早期警戒、通信・宇宙監視といった役割を担ってきました。
つまり、グリーンランドを押さえることは、ヨーロッパのためというより、アメリカ自身を守るための前線を確保することでもあります。
そう考えると、2026年になってトランプ大統領が
「グリーンランドを手に入れるべきだ」といった強い言葉を使った背景も、少し違って見えてきます。
発言自体は突飛に聞こえますが、グリーンランドの重要性そのものは、
アメリカだけでなく、NATO諸国やデンマークを含む関係国の間で、冷戦期から実務レベルで共有されてきた認識
でした。
ただ、多くの国が配慮して言葉を選んできたのに対し、トランプ大統領はそれを取引的で直接的な表現に置き換えただけ、とも言えます。
「守るだけで、何も得られないのは不公平」という視点
なお、グリーンランドにはレアアースなどの資源が存在すると指摘されています。
現時点では氷床や採算、環境面の課題が大きく、すぐに本格的な開発が進む状況ではありません。
それでもアメリカの立場から見れば、
将来、戦略的価値を持つ資源があるかもしれない場所を、長年防衛だけ引き受けながら、制度的な関与権を持たない状態は、不公平
そんな風に次第に映ってきた可能性もあります。
トランプ大統領の発言は、資源そのものというより、こうした負担と責任のバランスをどう位置づけ直すかという問題意識の表れと見ることもできます。
独立すればすべて解決するのか

では、グリーンランドが独立すれば、こうした問題は解決するのでしょうか。
実際には、独立しても地理的な重要性は変わりません。
完全な非軍事中立は難しく、どこかの大国と安全保障関係を結ぶ必要があります。
その場合、米軍基地を「条件付きで認める」という選択肢が、最も現実的だと考えられています。
ただし、財政や外交、防衛体制が整わないまま独立を急げば、かえって不利な条件を飲まされる可能性もあります。
そのため、グリーンランドでは「急がないこと」自体が、今の戦略になっています。
おわりに
グリーンランドは、守って欲しいから守られている場所ではありません。守らなければならない場所になってしまったから、今も守られ続けている島です。
地理は選べません。
だからこそ、この静かに暮らしたい小さな社会は、大国に囲まれ世界情勢の影響を受けながらも、「どう関わられ、どう守られるのか」を自分たちのペースで選ぼうとしています。
この島をめぐる動きは、これからの世界のバランスを考えるうえで、重要なのではないでしょうか。

