テオ・ヤンセンをご存知でしょうか。現代のレオナルドダヴィンチとも言われる天才オランダ人です。
ジブリの世界に登場しそうな、風を食べて浜辺を動く巨大な人工生命体「ストランド・ビースト」の生みの親である彼は芸術家であり科学者でもあります。
近年は日本各地でもテオ・ヤンセン展が開催され話題に。そんなヤンセンの二足歩行ロボット「ミニ・ビースト」が作れる学研のキットを手に入れたので、作ってみました!
現代のダ・ヴィンチ、テオ・ヤンセンとは
芸術家として有名なレオナルドダヴィンチは、実は科学、物理、天文学、医学、数学などの分野にも長けていました。さらにそれらの知識をもとに時代にそぐわない革新的なアイデアとデザインで多くの機械を設計し、技術者としても活躍しました。まさに天才です。
現代のレオナルドダヴィンチと称されるテオ・ヤンセンも、ダヴィンチと同じく芸術・科学・技術という3つの面に非常に精通しており、それらを融合した常人では決して思いつかない機能的なアートと科学が一体となった芸術作品の数々を誕生させました。
今は現代アーティストと言われていますが、彼もまた、歴史に名を刻むであろうまごうことなき天才です。
1948年、オランダで誕生したテオ・ヤンセン。デルフト工科大学で物理学を専攻の後、1975年に画家に転向しました。そして1990年から代表作となるストランド・ビーストの制作をはじめ、世界から脚光を浴びるようになったのです。
代表作はストランド・ビースト
ストランド・ビーストは、風の力で浜辺を動く不思議な巨大人工生命体です。恐竜のようであり、ロボットのようでもありますが、非常に美しいですよね。
ちなみに「ストランド・ビースト」という名前はオランダ語の砂浜(Strand)と生物(Beest)という2つの単語を組み合わせたヤンセンによる造語です。
実はこのストランド・ビースト、ただの芸術作品ではなく、海面上昇という問題を抱える祖国オランダの海岸を守るために、物理や科学に精通した技術者でもあるテオ・ヤンセンが生み出した浜辺防衛システムなのです。
高潮による洪水を防ぎ、また海面上昇により消えていく砂浜を守るために、どうにか自立的に砂を積み上げたり積み上げたりするシステムを構築できないか
と考えたテオ・ヤンセン。
科学と芸術を融合させた驚くべきアイデアでストランド・ビーストを設計し、1990年から制作を開始しました。
それから現在に至るまで30年以上の間でストランド・ビーストは何種類も制作されましたが、その度にまるで生き物のように新たな能力を獲得し続け、今も進化を続けています。
ストランド・ビーストは、ペットボトルの胃袋に貯めた風をエネルギーとして、ホーリーナンバーと呼ばれる黄金比の脚を動かしプラスチックチューブの細胞でできた巨体を稼働させます。
感覚器を備え、身の危険を感じると方向転換します。また、強風にさらされると自ら砂浜に杭をハンマーで打ち込みます。
電気などの人工的な動力を使わずに動くことができるストランド・ビーストは、きっとヤンセン亡き後も浜辺を守り続けてくれることでしょう。
ちなみに2024年は7月以降では、島根県と宮崎県でテオ・ヤンセンの特別展覧会が実施されます。現物にお目にかかれる貴重な機会なので、お近くの方は是非足を運んでみてくださいね。
学研のキットで、ヤンセン式二足歩行ロボットを作ってみた!
美しさと実用性を兼ねそろえたストランド・ビースト。
特別展に足を運ばない限り実物を拝める機会は滅多にないですが、なんと学研の制作キットで、実際に風を受けて歩くミニビーストを自分で組み立て動かすことができるのです!
運よくこの組み立てキットを特別展を見に行った母からお土産でもらうことができたので、組み立ててみました。
何歳から制作可能?
このミニ・ビースト制作キットには、対象年齢は記載ありませんでした。ただ、6歳の子供が一人で制作するのは正直かなり難しいと思います。
我が家にはレゴやラキューなどブロック系の遊びがかなり得意な小1の6歳児がおりますが、
これはちょっと難しい…
と尻込み。
付属の説明書がちょっと難しいのです。よっぽど空間把握能力に長けているかプラモデルを日常的に作っているような子でないと一人では作れないでしょう。
低学年の子供であれば、大人が一緒にはめる場所などを指示しながらやるのがベストだと感じました。高学年ぐらいの子供なら一人でもできるかもしれません。
組み立て所要時間は約60分と記載がありましたが、実際はもう少しかかると思います。(私は多分2時間以上かかりました汗)
子供が制作するならば、夏休みなどのじっくりと時間がとれる長期休みに取り組むのがよさそうです。
制作で身に付く能力
学研が販売しているこのキット。学研といえば子供の能力開発や知育・学習用品のイメージが強いですが、STEAM教育にもかなり力を入れています。
STEAM教育いうとプログラミングがまず頭に浮かびますが、学研によるとSTEAM教育とは
総合的な探究力・創造力を身につけ、問題解決能力を育てる
学研教室公式HP
というものなのだそうです。現代の未来を担う子供たちに必要とされるのは、
- 自然現象を学ぶ科学(Science)
- 情報処理の仕組みや考え方を学ぶ技術(Technology)
- 工業に役立つものづくりを学ぶ工学(Engineering)
- 美術以外にも文化や経済、倫理など総合的に学ぶ芸術(Art)
- 論理的な思考を学ぶ数学(Mathematics)
この5つのアルファベットの頭文字をとって、STEAM教育と言われています。昔と違って、文系理系の枠にとらわれない総合的な力がこれからのAI社会を生き抜くためには必要ということですね。
入手したテオ・ヤンセンのキットには、しっかりと学研STEAMの文字が。
STEAM教育の学習というと堅苦しくてやる気が削がれますが、手を動かし楽しく作りながら間違いなくSTEAM教育を完了している天才・ヤンセンの考え方を学習できるなんて、最高ですよね!
作ってみた!道具はいる?作り方はどんな感じ?
6歳の息子が難しいと制作を渋っているので、まずは母親である私が作ってみることにしました。ちなみに私は超文系の人間で数字にめっぽう弱く、プラモデルが苦手な人間です。(汗)
開封してみると、細いプラスチック製のパーツと小さなネジ、金属製の小さな玉とチューブと両面テープ、スポンジ、滑り止めパーツと小さな金属棒、ブレードが入っていました。
組み立てキット以外に必要な材料は、ニッパーかハサミかカッター、軸径4ミリ以下の細いプラスドライバーのみです。少なくてうれしい…。
ミニ・ビーストの骨組みとなるプラスチックパーツの多くは、プラモデルのように切り取って使うカタチです。ハサミでも切れますがニッパーの方がきれいに切れました。
パーツを切り終わったら、いざ組み立てです!意気込んで説明書を開きましたが、まず最初にパーツの名前と実物が一致せず頭を抱えました。各工程ごとに必要なパーツを先に集めておいて組み立てるのが吉のようです。(汗)
息子が尻込みした説明書は、プラモデルを作り慣れていない大人の私にとってもやはり分かりにくく、組み立てに苦戦しました。
これで向きは合っているのか?と不安になりつつも、まずは左脚、右脚を組み立てます。
途中数本小ネジで軽く固定するところがありました。
頭があまり良くないので構造や仕組みなど詳しいことは見ても良く分かりませんでしたが、出来上がったのを見てみると、
これがヤンセンの開発したホーリーナンバーの脚か!
と感動。
この後、右脚と左脚をつなげ本体を作り、足と風車を取り付け完成です。本体の組み立てが進むとどんどんメカニカルになっていくので、楽しかったです。
ミニ・ビーストを作って動かしてみた感想
完成したミニ・ビーストを見ると片足が少し上がっていて、ちょっと不安定。どこかで組み立て方を間違えたのではないかと不安に思いつつ、うちわであおいでみました。
#テオヤンセン のミニ・ブースト二足歩行ロボット。やっと完成!
— 奈良の古民家暮らし (@naranokominka) July 5, 2024
うちわの風だけで無事に動きました。すごい。 pic.twitter.com/gcyoJihgTp
すると、動いた!!シリコンバンドを付けた2つの足が交互に前後して歩いたのです。
上手に動かすには風を当てる向きや強さなど少しコツがいりますが、自分の手で組み立てたものが電気の力を使わずに自立して歩く姿には、感動しました。
このミニ・ビーストは接着剤を使わずに組み立てることが可能ですしネジも軽く留めているだけなので、もう一度バラバラにして組み立て直すことができます。
今は難しい!といって作れなかった6歳の息子ですが、少なくとも私よりは頭がよさそうなので、もう少し大きくなったらきっと一人でも組み立てられるようになると思います。
そのときには解体して組み立てに挑戦させてあげる予定なので、説明書は大事に取っておくつもりです。
息子にも私が味わった感動を味合わせてあげたい!
組み立てに苦労したので、とりあえずしばらくはこのまま、部屋のインテリアとして飾っておきたいと思います。(笑)
ネットで買えるテオ・ヤンセン作品の制作キットをご紹介
私が入手した学研のテオ・ヤンセン式に足歩行ロボットですが、調べてみたところネット上ではあまり新品販売されていないようです。
学研のものは、ヤンセン展の会場などでの限定発売品なのかもしれません。(余談ですが静岡県での特別展ではミニ・ビーストの組み立て体験ワークショップなども開催されていました)
全く同じものはメルカリやアマゾンで個人出品されていることがあるので、気になる方はチェックしてみてください。
ご紹介したものと全く同じではありませんが、ネットで買える同じようなテオ・ヤンセンのミニ・ビーストを制作できるキットを見つけたのでご紹介します。
それは「大人の科学」マガジンシリーズの付録です!
現在は廃盤となっているようで完全な新品販売はありませんが、アマゾンや楽天などで中古品を購入することができます。もちろんメルカリで出品されていることもあるので、そちらも要チェック!
上記以外にも、大人の科学では何回かミニビーストの付録がついた号を発売しているようなので、お好みのものを探してみてください。
下記の動画で組み立ての様子が紹介されていたので、購入を考えている方は是非ご視聴を。
まとめ
芸術と科学を融合させたテオ・ヤンセンの作品・ストランド・ビースト。機能的で機械的な美と芸術的な美をあわせ持った、未来を感じさせる素晴らしい、まさに人工生命体です。
(個人的にはジブリやエヴァンゲリオンに出てきそうな雰囲気で萌えます笑)
天才・ヤンセンの頭の中をのぞき見できる学研の二足歩行ロボット(ミニ・ビースト)制作キットは次世代を担う子供のSTEAM教育の教材にもぴったりですし、大人も組み立てて楽める商品でした。
特別展が開催されている地域の方は是非足を運んで、このキットを手に入れて組み立ててみてくださいね!