2月3日の節分、奈良元興寺の節分会へはじめて参加してきました。
鬼の寺といわれる元興寺は「鬼は内、福は内」という少し変わった掛け声で行われる豆まきの他、火渡り修行もあり本格的に節分会を行うお寺です。
元興寺の節分会についてと、元興寺は鬼の寺といわれる由来が気になり調べたので記事にします。加えて元興寺の節分会の様子をリポートするので、雰囲気が伝わればうれしいです。
【2月3日】火渡り修行がある!?元興寺の節分会について
家内安全や除厄を祈願する節分の2月3日には、多くのお寺で豆まき行事が行われますよね。
奈良で節分会や追儺会が執り行うお寺は東大寺・興福寺・西大寺などが有名ですが、それらと並んで人気なのが元興寺(がんごうじ)。
観光街ならまちに位置し、世界遺産でもあり有名な奈良の古刹・元興寺。場所柄もあり庶民に慕われていて民間信仰も盛ん、いかにも大寺院!という雰囲気ではなく、温かみのあるお寺です。
元興寺の節分会では豆まきの他にも一般参拝客が参加や見学できるような行事があるため、昔から人気が高いのです。具体的には
- 柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)
- 火渡り修行
字面だけみると難しそうで何だかよく分かりませんよね。(汗)簡単にどんな行事なのか説明します。
柴燈大護摩供(さいとうおおごまく)13:00~
山伏姿をした本山上千光寺の修験者が本堂前に焚かれた炎に不動明王を歓進(お呼びする)。
矢を放ち場を清め、読経の中、炎の中に願いを書いた護摩木を投げ入れ焼き尽くすことで、炎の中の不動明王に願いを聞き届けてもらう
というもの。ここで焚き上げる護摩木は受付の添護摩祈願申し込み(有料)をすれば、誰でも祈祷焚き上げしてもらえます。
一連の儀式を見るだけでもご利益がありそうですが、護摩木を書いて焚き上げてもらえばなお効果がありそうですよね。
儀式の最初で山伏が放つ矢は魔除けの矢となるので、見物客が懸命にキャッチし大にぎわいなのだそうよ。
火渡り秘供14:00頃~
https://twitter.com/ikomaasami/status/1753654707162431853
柴燈大護摩供で燃えた丸太のような木を並べて道を作り、その上を裸足になって歩くことにより厄除け・招福祈願をする
という行事。正確には火生三昧秘儀というそうですが、火渡り修行や火渡り行とよくいわれます。
修行というので、すごく熱くなった木の上を歩く過酷なものなのかとドキドキしてしまいますがそんなことはなく、普通に歩けばやけどはしないそうです。
全く熱くないという声もチラホラで、女性や子供も参加しています。先着300名限定だったので、参加したい方は早めに行って申し込むのが吉でしょう。
福豆まき15:00~
境内の特設舞台の上から年女・年男らが珍しい「鬼は内、福は内」の掛け声で福豆をまきます。
この掛け声には「鬼は自分の内から出るように」「福は家の内に入るように」という意味が込められているそう。
人間の中には5色の鬼=煩悩が住み着いていて、
- 赤鬼は欲望や渇望
- 青鬼は憎しみや怒り
- 黄鬼は執着や後悔
- 緑鬼は暴飲、怠惰などの不摂生
- 黒鬼は疑いや愚痴などの卑しい気持ち
を意味するらしいです。
マメよって魔を滅して、穏やかな暮らしを妨げるその鬼を自分の内にいる厄介な鬼を追い出そうということか!と掛け声に納得。
2019年から参加できるのは火渡り修行をした方か特別祈祷に申し込んだ方のみとなっていて一般客は残念ながら参加できません。
しかし見物はできるので、節分の雰囲気は充分に味わえること間違いなしです。(この様子は記事後半でリポートします)
開始時刻が15時からなので、14時からの東大寺二月堂・豆まきからのハシゴができるのもうれしいポイントです。
この他、今年は行われたか分かりませんが、コロナ渦以前は地元の蔵元による振る舞い酒もあったのだそうですよ!そしてゆるキャラも毎年登場します。
さらに入口の特設テントでは有料ですが
- 持ち帰り用の福豆販売
- 元興神(がごぜ)絵馬の購入や祈願
- 護摩祈願の受付(護摩木に願いを書き焚き上げてもらう)
- 火渡り修行申し込み
などがあり、当日の一見客でも節分会を見るだけではなく参加することができるのが、他にはない元興寺・節分会の魅力です。
奈良・元興寺が鬼の寺といわれるのはなぜ?
元興寺は、奈良時代に創建された大寺院。現在社領はかなり縮小されていますが、かつてはならまち一帯が元興寺というぐらい大きな敷地を持つ、東大寺や興福寺と並ぶ大きなお寺でした。
ところで「元興寺」ときくとお寺ではなく中には鬼や妖怪を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それもそのはず、元興寺は寺院の名前だけではなく、「鬼の代名詞」としても使われる言葉。
【元興寺(ガゴゼ)】生まれついて怪力を持ち、10歳の頃には力自慢で有名な皇族の王の1人と力比べで勝つほどで、後にこの子供は元興寺の童子となった。寺に鬼が出れば退治をし、怪力で活躍をした末に得度出家し、道場法師となった pic.twitter.com/jQE7lITMlI
— 妖怪カルテ (@yokaikarte) October 15, 2022
さらに「元興寺(がごじ)」という元興寺に出る僧の姿をした鬼や「元興神(がごぜ)」という鬼を退治した鬼神のことを指すこともあります。
また関東~西日本では幼児語で鬼のことを「がごぜ」ということもありますが、これも「がんごうじ」からきているという説も。
そもそもなぜ鬼=元興寺になったかというと、日本最古の説話集『日本霊異記(にほんりょういき)』の中に
元興寺の鐘楼で童子が何人も殺害されるという鬼による奇妙な事件が起きた、そのとき雷神の申し子で元興寺の怪力童子(のちの道場法師)が鬼の毛髪をはぎ取って退治した
という有名な逸話があるためなのだそう。
『日本霊異記』は平安時代初期という非常に古い時代に書かれた説話集なのでまだ他に同じような本もなく、この話を元に日本全国に鬼=元興寺と広まったのでしょう。
ちなみに鬼の正体は昔元興寺で働いていた悪評の絶えない下男があやかしとなったもので、退治の翌朝その男の墓に血痕が続いていたそうです…。
悪鬼を倒した雷神の申し子であった童子は、現在でも良鬼として「元興神(がごぜ)」となり崇められています。
【元興寺節分会】当日の様子をリポート
今年は土曜日が節分だったということもあり、家族でお寺の節分行事に参加してみようかとはじめて出かけました。
我が家が元興寺に到着したのは14時半ぐらい。そこから豆まき終了までの様子をお伝えします。節分会の雰囲気が伝われば何よりですし、来年度の節分会の参考にもなればうれしいです。
到着した14時半ぐらいには有名な火渡り修行が終わったところで、門前が多くの人でにぎわっていました。
間に合わなくて残念でしたが、お寺の入り口の方からも本堂の前に大きな炎が焚かれているのが見えて、テンションが上がります。
まず入口で入山料(大人1人500円)を支払うと、福豆が1袋いただけます(1000袋限定)。
その並びで門前に仮設テントが張られ、様々な祈願受付や販売がされていました。
祈願受付・販売内容
- 添護摩祈願1000円(お札送付あり)
- 元興神(がごぜ)祈願3000円(絵馬・お札送付あり)
- 特別祈願5000円(絵馬・お札・お守り・交通安全ステッカー送付あり)
- 福豆100円(一袋)
- 絵馬のみ販売1000円
添護摩祈願に申し込むと、当日炎で焚き上げしてくれる護摩木を書くことができます。
元興神(がごぜ)祈願は、添護摩祈願と同じくことができるのに加え、元興神絵馬とお札の送付があります。
特別祈願は、元興神祈願と同じ内容+祈願の内容明記ができる本堂不動法祈願境内大護摩祈願+お守り・交通安全ステッカーの送付があります。
先述した日本霊異記の逸話に出てくる童子たちを守って悪鬼を倒した元興神(がごぜ)が描かれた元興神絵馬は、就職や就学を控えた子供のいる家庭に特に人気。丑寅の方角にかけると吉だそうですよ。
送付されたお札は台所など火の出るところに飾ると良いらしいです。
願い事によって祈願申し込みを選ぶとよさそうですね。
通常のお守り類の販売や御朱印授与は門横の寺務所で行われています。
門をくぐると、あったかい!御本堂の前で巨大な炎が焚かれ修験者たちによって護摩木が焚かれ続けていました。炎が巨大なので、とにかく暖まります。
今年は暖冬ですが、厳冬の年にはこの炎がとてもありがたく感じるのだろうなと思います。炎の周りには白い灰がたくさん舞っているので、ご注意を。
かなり強火なので、近くにいきすぎるとジャンパーなどに穴が開くこともあります。灰まみれにはなりますが、とりあえずご利益がありそうなので煙を頭にかぶって手を合わせておきました。
そして炎の横には火渡り修行の跡が。今年は時間が合わず参加できませんでしたが、来年は我が家も火渡り修行にチャレンジしたいところです。
15時からの豆まき会場は、本堂正面向かって左手。特設舞台が組まれていて、豆まきへの参加権がある方(火渡り参加者・特別祈願申し込み者)はスタッフの方によって会場内へ誘導されていました。
一般客は棒で仕切られたその後方(炎の前)から眺める感じです。
節分会の当日は宝物殿は閉館していましたが、本堂は中に入り参拝可能でした。参拝後、本堂の裏手へ周り豆まき舞台の裾の方へ行ってみると。
参加予定の年男年女の方やお寺関係の方、ステージにこれから上がる奈良のゆるキャラ・ならまちこちゃんや、しかまろくんの姿が!息子は大喜び。
隣にいたお寺関係の方が
せんとくんとかも来てたけど、最近来おへんな~、忙しいみたいやで
と教えてくださいました。(笑)
この舞台裾の方の前方は報道関係のカメラマンなどの特設席のようで、ここからだと少し豆まきが遠いな~…と思い、先ほどの炎前(豆まき参加者の後方)に移動。棒仕切りの外も、にぎわっています。
15時頃になると老師のお話の後、豆を投げる年男・年女の紹介と共に特別出演の「ならまちこ」ちゃん、しかまろくん、ミス・ならの美人さんの紹介が。
しかまろくんは定員オーバーなのか分かりませんが終始舞台に上がらず舞台下にいました。(笑)豆まきは「鬼は内、福は内」の掛け声と共に5分程度で終了。
仕切りの外にもラッキー福豆が飛んでくるかな?
と期待していましたが、投げる皆さん会場内の方のみに届くように投げられていました…。残念。でも雰囲気はしっかりと楽しめたので良しとします!
あと、ならまちこちゃんも上手に投げているのが印象的でした。ちなみに、ならまちこちゃんは、しかまろくんと比べて動くのが早く終始軽快な感じ。(笑)
終了後、人が一気に散り節分会終了の雰囲気に。特設舞台も片付けはじめています。再び本堂裏、先ほどの舞台裾の方へ回ってみると、ゆるキャラたちの姿が!
開始前とは違い一仕事終わりゆっくりとしており、集まった参拝客と記念撮影をサービスしてくれていました。我が家ももちろん一緒にパシャリ!
ゆるキャラはあまり詳しく、ならまちこちゃんは知りませんでしたが、人気があるらしく多くの人が一緒に写真を撮るために集まっていました。
その後、せっかくなので境内のお庭を散策。元興寺は節分会は多くの人でにぎわいますが、普段は割と落ち着いた雰囲気でほっこりできるお寺で好きです。
瓦がきれいですね。他の瓦と比べるとカラフルでカタチが異なる写真奥側の極楽堂・禅室の丸瓦は、日本最初の仏寺である飛鳥寺を建てる際に百済王が派遣した瓦博士によって作られた、日本最初の瓦。
飛鳥寺が現在地に移り元興寺となったときにもこの丸瓦は運び移されたため、現在でもここ元興寺で当時の瓦をこの目で見ることができています(ありがたや)。歴史の深さを感じますね。
そして、苔が素晴らしい!石仏と相まって詫び錆びを感じます。まさに天然のテラリウム、癒し効果は抜群です。
境内にひそむ5体の鬼を探すのもかくれんぼのようで楽しいですよ。
帰りにはまだ入り口仮設テントで福豆など販売されていました。
最初にいただいた福豆を子供が食べてしまったため、家の豆まき用に1つ追加購入し帰りました。
帰宅後、東大寺二月堂の福豆と元興寺の福豆を使い自宅で豆まき。ご利益が2倍になった気がします。ちなみに東大寺と元興寺の豆に大きさなどの違いはありませんでした。(笑)
まとめ
豆まき以外に護摩供(ごまく)や火渡り修行などもあり、本格的な元興寺の節分会。すごいと噂には聞いていましたが、今回初参加してみて、とても楽しめました。
東大寺二月堂のお水取りのように、もっとごった返しになるかと思いましたが思ったよりはこじんまりとしていて居心地も良かったです。
見物だけでも楽しいですが、来年は護摩供や火渡り修行も間に合うように行ってやってみたいと思います。
来年度2025年の節分は、2月2日・日曜日の予定。参加できる方も多いと思うので、是非ご家族で出かけてみてはいかがでしょうか。