普段は非公開の旧細田家住宅は、奈良町にある小規模農家。閑静な住宅街が広がるきたまちエリアの中にあります。奈良町見知ルのイベントで、無料特別公開されていたのではじめて内部を見学してきました。江戸時代の農家の様子を垣間見ることができたのでリポートします。
イベント「奈良町見知ル」で無料特別公開
2022年11月6~13日にかけて奈良町内で行われていたイベント「奈良町見知ル」で、旧細田家住宅も限定特別公開されました。
奈良町見知ルは多くの未公開建造物が特別公開される貴重なイベント。年に1回開催されることがあるので、ぜひ奈良観光がてら参加してみてくださいね。
この記事では、きたまちエリア内で特別一般公開された4つ(北山十八間戸、鍛冶千、旧細田家住宅、武蔵野美術大学奈良寮)のうち旧細田家住宅をご紹介します。
旧細田家住宅について
17~18世紀の江戸時代に建築されており、奈良市内でも最も古い形式の農家住宅の一つなのだそうです。
その直後の保存修理で間取りや壁・建具などが江戸時代の頃と同じように復原されているので、江戸時代農業住宅の様子がリアルに感じられます。
お隣は細田歯科さん。こちらも立派で素敵な建物です。苗字が同じなので、親戚の方かもしれませんね。
入口には奈良町見知ルの看板と、旧細田家住宅の案内板がありました。
普段は一般公開されていないので、普通の家のように固く扉が閉ざされ中の様子をうかがい知ることはできません。近鉄奈良に住んで9年が経ちますが、こちらの物件もはじめて入ります!ドキドキ。
いざ!はじめての内部見学へ
中に入るとまず目に入るのが、入口すぐ左側にある牛小屋。室内に牛小屋があるのは、珍しいのではないでしょうか。農耕期になると山から連れてきてこの牛小屋で飼育していたらしいです。
牛というと牧場にいるような白黒模様の大きい牛のイメージがありますが、農耕用の牛なのできっと小型なのでしょう。けっこうせまいスペースです。牛小屋の上は物置になっています。
牛小屋の横にはかまどが。大小5つ並んでいます。ここで主人の素朴な疑問。「こんなにでかい釜でご飯炊くの?どれだけ大家族やねん。」確かにそうです。
5つのうち端にある1つはかなり大型。飲食店の何升炊きかの釜みたいです。案内係の方に聞いてみたところ、大型の釜は普段使いするものではなく、神様用のものとのこと。
普段は榊などをお供えしておいて、実際に使うのはお正月など祝い事のときだけだったと教えていただきました。
かまどの斜め上のあたりの天井には、煙が出ていく穴がありました。これが外から見るとまた独特なつくりなので、後で屋根を見てみてくださいね、と係員さんに言われました。
かまどの横、窓際には流し台と水がめ。流し台はフチのついたまな板のような四角い浅型桶。排水がないので水が汚れたら外に捨てに行くシステムのようです。大変ですね…。
台所の上の方に家紋のついた小箱がありました。これも不思議に思い係員の方に聞いてみると、「提灯箱」だそうです。折りたたんだ提灯を閉まっておいたのですね。ミニマムです。
昔は大きい家には何個も提灯があったので、たくさんの提灯箱が並べられていたのだそうです。まさに時代劇のよう。時代を感じますね!
牛小屋横からこの囲炉裏の上に続く太い梁がこの建物の特徴の一つ。
少し低めの位置にある梁の上には壁が作られていますが、これはかまどの煙がすぐ向かいにある居間に流れ込まないようにする工夫で「煙返し」と呼ばれているそうです。せまい農家ゆえの工夫ですね!
次は囲炉裏の向かいにある居間です。靴を脱いで上がらせてもらえました。
居間と仏間が2間続いています。ここで飲食して就寝していたのかと思うと、何人家族ぐらいだったのかは分かりませんが現代人の間隔からすると、結構狭く感じます。
家の面積的にいっても典型的な町家のように奥行きがなく、かなり狭い。ここで農作業をするのは大変だっただろうなと勝手に推測していました。
台所寄りの居間の天井は竹で、道路側の仏間の天井や外寄り通路は板張りでした。竹の天井は、竹のすのこの上にむしろを敷き土をのせてあるのだそうです。
竹のすのこでできた天井は珍しいので、印象的でした。
屋根裏は葺き替え様の草を保管したり物置にしたりして利用していたのだとか。せまいがゆえに、工夫が多いですね!
居間の奥側にも土間が続いていて、農作業に使う道具が置かれていました。5歳の息子も興味津々で、係員の方に「あれはなに?」と自ら聞きに行っていました。成長です…。
土間の向こう側は外壁で、隣家との境にわずかな通路があります。ここも物置などに使っていたのでしょうか。
窓はもちろんガラスではなく木戸。係員の方が閉めてみせてくれましたが固くて開け閉めが大変そうでした。
たくさん質問に答えてくださった奈良町見知ルの案内係の方に感謝です!
最後に外に出て、屋根をじっくり見てみました。旧細田家住宅の特徴の一つ、「大和棟(やまとむね)」です。
なるほど、たしかに向かって左側、かまどがあったところの上に瓦葺きの小さな屋根がついています。
それ以外の部分は高く切り立った切妻造りの屋根は草葺きで、建物前後の軒ひさし部分は瓦葺き。
こういった構造を「大和棟」というそうで、大和平野の農家を中心に分布する独特な屋根のカタチです。
「奈良町見知ル」イベントで次に向かう無料公開スポット、武蔵野美術大学奈良寮も独特な屋根だったので、見比べてみるのが楽しみです!
終わりに
立地上広く敷地をとれず、農家でありながら町家のように狭い旧細田家住宅。狭いならではの工夫が随所に見られ、興味深かったです。
調度品なども昔のものがそのまま置かれていて、江戸時代の奈良町にタイムスリップしたかのような時間が過ごせました。
普段は非公開ですが、奈良町見知ルなどのきたまちイベントで特別公開されることがあるので、その際は是非足を運んでみてくださいね。