秋のメタセコイア並木

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メタセコイアを街や庭に植えてはいけない理由。倒木リスクと維持管理の現実

北欧の森を思わせる美しさがあり、街のシンボルツリーにぴったりなメタセコイアの木

周囲の樹木と比べて圧倒的に背が高く、美しい円錐形で、立っているだけで風景が引き締まるような存在感がある木です。

メタセコイアは街路樹・並木道として人気ですが、実は巨大化がはやく、倒木リスクや維持管理の高さから

植えて後悔しやすい木」とも言われています。

この記事では、街中で見かける美しい巨木の裏にある管理の現実と、なぜ伐採が増えているのかを都市景観の視点から解説していきます。

北欧っぽい?メタセコイアってどんな木?

冬のメタセコイア並木

ひときわ目をひく、縦に一本スッと伸びた10メートル以上はある三角形をした巨木。それがメタセコイアです。

春は新緑のライトグリーンが美しく、
夏は深い緑色で柱のような存在感を示し、
秋は黄金から赤銅色の神秘的な紅葉、
冬は葉が落ちて彫刻のように美しい枝ぶりがあらわになる。

四季全てが美しい樹木で、一本でも主役級。並木道となったら圧巻の魅力とインパクトがあります。

名前は知らなくても、きっと見たら「ああ、これがメタセコイアか!」と多くの人は思う木なのではないでしょうか。

紅葉の時期は特に黄金色に輝き美しく、どこか北欧の森のようなロマンチックさがあり、いつもうっとりと眺めてしまいます。

日本では滋賀県のマキノ高原の並木道が有名ですが、東京都立川市の昭和記念公園・京都府けいはんな学研都市など全国に名所があります。

実はメタセコイアは1940年頃に日本の植物学者・三木茂博士が日本各地の地層内化石の中から発見し学名をつけた新種で、

発見当時は100万年ほど前に「絶滅した木」と考えれていました。

しかしそのすぐ後、

1946年に中国で生きた個体が発見され「生きた化石」として大ニュースになり、

戦後に種が栽培され世界中に広まった木なのです。

とてもドラマチックな背景を持った木ですよね。

日本(東アジア)で街路樹として人気が出た理由

日本にも、その種は戦後の復興期に入ってきました。

戦争で荒れた都市を手早く整えるための戦後の都市計画で重宝され、
大通りや新興住宅地、キャンパス内などに多く植えられました。

当時、メタセコイアが街路樹として広く採用された理由は下記の通りです。

  • 成長が早く、都市景観がはやく整う
  • 剪定がほぼ不要で管理が楽
  • 話題性があり、近代化の象徴になる
  • 憧れの欧米的な樹形で景観に映える
  • 落葉針葉樹で季節感が楽しめる
  • アジア原産なので育てやすい

縦に一本スッと伸びていくメタセコイアの力強い姿は

近代化と復興のシンボルとして、

「欧米に憧れ、追いつけ追いこせ」だった戦後復興期、

高度成長期の日本の価値観にぴったりの木でした。

メタセコイアが街路樹として人気なのは、実は日本や東アジアだけ。なぜ?

そんなメタセコイア、実は街路樹として人気なのは、日本・韓国・中国など東ヨーロッパのみで、

憧れの元・欧米ではほとんど街路樹として採用されていません

韓国や中国など東ヨーロッパでメタセコイアが街路樹に採用された理由は、日本とほぼ同じです。

特に韓国では日本以上にメタセコイアは街路樹として人気。

逆に欧米が街路樹に採用しない理由は簡単で、非常に合理的です。

巨大化しすぎるメタセコイアは、倒木の危険も高く管理者に対しての賠償責任も重く、管理コストが高すぎて現実的ではないから。

欧米では、それよりは人力で剪定しやすい、人間の手で維持管理できる木が街路樹として選ばれます。

基本的に欧米ではメタセコイアのような管理が必要な巨木は、
主に植物園や公園、大学キャンパスなど
予算をかけて管理する前提のところに植えられるそうです。

欧米へのコンプレックスと憧れを持って、
東アジアで多く街路樹に採用されたメタセコイアですが、
実は憧れの地・欧米では馴染みのある木ではない
というのは何とも皮肉ですよね。

メタセコイアのような巨木を街に植えたら危険?

メタセコイアのような美しい巨木をシンボルツリーとして植えてみたいな、と思う方は、行政やマンション団体、個人でも多いのではないでしょうか。

でも実際に植えようと思ったら、相当な覚悟が必要な樹木です。

メタセコイアを例に、巨木を植えた後のリスクをまとめてみました。

①30メートル級の巨木になるため、落雷や台風での倒木リスクがある
…年間50cm~1m伸びて、10~20年経てばビル3~5階の高さ(!)になります。さらに成長が早い=軽い材質のため、強風に弱い面もあります。

➁周囲との日照権問題も発生する
…大きくなって幅も高さも出るため、近隣ともめることがあります。

③根が上がり道路舗装を押し上げる危険性がある
…大きくなると根が縦にも横にも広がり、周辺道路がぼこぼこになることもある。

④縦に伸びすぎて人力で管理不可能
…手入れにはクレーン車など機械が必要で費用がかさむ。
1本の剪定で8~20万円以上することも(ランニングコストが高すぎ)。


⑤落ち葉の量が半端なく多い
…落葉樹のため、秋は落ち葉・冬は細かい葉柄軸が落ちる。

量が半端なく掃除が想像以上の手間。

このような問題点があります。

戦後に新しく発見・輸入されたメタセコイアは当時こうしたリスクが考えられておらず、
「成長がはやくて丈夫で欧米風で美しい木」というイメージ先行のまま全国に広まりました。

でも実際は莫大な手間とコストがかかります。

最近は、
戦後ニュータウンのメタセコイアなどは管理が大変すぎる
という理由で、伐採されているところも多いようです。

個人宅で植えたい人へ。メタセコイアの代替木は

これらのリスクを見てると、
気軽に採用できるような木ではないということが分かりますよね。

メタセコイアは個人で扱えるスケールをはるかに超えています

個人宅でメタセコイアのような木を植えたければ、
針葉樹で縦に伸びて美しいけれど管理しやすい

  • コニファー
  • スカイロケット
  • ホソイトスギ

などがよいのではないでしょうか。

植えられた背景を考えると、街の木を見る目が変わる

メタセコイアは巨大な予算と、

長い年月、維持管理をする覚悟がないと植えられない難易度が高い木です。

中途半端な気持ちで美しいからという理由だけで植えると、

あとで大変なことになります。

私はそのことに気づいて以来、
街中で美しいメタセコイアのような巨木を見かけたときには、
その裏側にある見えない人々の努力や維持の歴史の存在に感謝するようになりました。


街の景観は、誰かの手間と綿密な計画があってはじめて成り立っている
私にそんな気づきをくれた、メタセコイアの木でした。

あなたの街にも、珍しい木はありますか?

その背景を調べてみると、散歩中の風景の見え方が少し変わって、

楽しみが一つ増えるかもしれません。

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