選挙後、新しいメンバーで初の議会となる2025年8月臨時会が8月19日~22日の4日間開催されています。1日目の様子をリアルタイムにて視聴したので、決まったことや議会の流れ・雰囲気などをシェアします。
奈良市議会・臨時会1日目のまとめ
令和7年8月19日、選挙後はじめての奈良市議会臨時会が開かれました。1日目の流れは前回とほぼ同じで、次の2点が決まりました。
- 10:00~10:28 議長・副議長の選出(無記名投票)
- 14:30~14:56 副議長の選出(無記名投票)・議会運営委員会の人数変更(委員会条例一部改正)
実際の進行はというと、議長選出に約30分、その後約4時間もの休憩をはさんで、残りは30分ほどで終了しました。
つまり、ほとんどの時間が「休憩」に費やされたことになります。私ははじめてまともに議会中継を見ましたが、「え?なんのための休憩なの?」と驚きでした。
※本記事は、7月選挙を機に奈良市議会について調べ始めた一般市民による記録です。正確を心がけていますが、誤りや不十分な点があればご指摘いただけると幸いです。
議長選出(無記名投票)結果
副議長選出(無記名投票)結果
委員会条例の一部改正
議会運営委員会の人数を 10名 → 9名 に変更(異議なしで採決)
対象:議会運営委員会
議会運営委員会は、いわば“議会の段取り係”。各会派の代表で構成され、どの議案をいつ扱うかを決める重要な委員会です。議会運営委員会の委員選任報告は例年2日目に行われます。
議長・副議長は法律上は任期4年ですが、多くの市議会では会派同士のバランスを取るための「持ち回り文化」として1年などで交代などが慣習となっているようです。
また会議中では、仮議席が本議席として取り決めされました。
へずまりゅう(原田将大議員)の初登場は?
1日目には注目の新人市議であるへずまりゅう氏(原田将大議員)はじめ、新人議員の発言機会はありませんでした。
ただし、へずまりゅう氏は自身のXにて『奈良市議会の議長選挙にて維新か共産か究極の選択が選べず自分の名前を投票しました』と素直に告白。
議長・副議長選挙ともに1票あった「原田将大」の名前は自薦票ということで、ある意味発言せずとも存在感を発揮していました。
ただしXには続けて『議員なので喧嘩をする訳ではなく協調性を持ち真面目に働きます。』と書いてあったので、その言葉に期待します。
なぜ市議会は不信感を持たれるのか?長すぎる休憩の謎
臨時会を見て感じた違和感
中継を見ている市民からすれば、議長選出が終わった後に延々と続く休憩時間は不可解です。
一般企業で会議参加をしたことがある人からすれば、非常に非効率で生産性が低い会議という気がするのではないでしょうか。
先の見えない長い休憩時間中、画面には「休憩中-NARA CITY」の文字と鹿の写真が映し出されるだけ。そのうち鹿の写真も消えて画面は真っ黒になりました。
裏で何が行われているのか、画面の先にいるイチ市民からはまったく見えません。
小さく「再開時間は改めてお伝えします」と表示があるのに、何時に再開予定というお知らせは一向に表示されず、4時間経過してやっと議会再開。
議会を見ている市民からすると時間も読めないし、議会を視聴してもらおうという気持ちはないのかな?と思いましたし、すごく不親切に感じました。
なぜ長い休憩になるのか
どうやら臨時会におけるこういった長い休憩は奈良市議会だけではなく、戦後すぐの議員制度が「対立を表に見せないで円満に」という文化で運営されてきた流れが強くのこっているため、慣習として今でも全国多くの議会で根付いているようです。
一般的によくいわれる議会側の理屈はこんな感じ。
- 票の確認作業(表に出ない細かい事務処理をやってる)
- 議長・副議長・委員会配分などの人事は会派間の最重要交渉ごとである
- 議場で対立や取引を見せると「混乱している・揉めている」と市民に受け止められる
- だから裏で合意形成を済ませ、表ではスムーズに投票・承認する
- 議会は「儀礼的な進行」を重視するので、あえて間をとって進める慣習あり。ちゃっちゃとやると「拙速」と言われかねず、会派間の顔を立てる意味もある
つまり「議場=決定の場」「控室=交渉の場」という棲み分けが前提になっているのです。
普段の議会中継を見慣れてない人からすると「休憩ばっかり!」って思えますが、議会ウォッチャー的には「はいはい裏でポスト調整してるな」っていう定番の光景のようです。
だからといって、これが当たり前のこととして受け入れられているのは時代にそぐわないし、議会に慣れている議員から見れば当たり前のことでも、一般的な市民感覚からすれば「変な慣習」というのは間違いないのではないでしょうか。
市民から見えるのは、ほぼ“空白”だけ
しかし、市民の目に映るのは長い休憩という“空白”だけ。
その結果、次のような不信感が生まれます。
- 「議会なんて結局密室政治だ」
- 「誰と誰がつながっているのか分からない」
- 「裏取引しているんじゃないか?」
不透明さはそのまま不信感につながり、「陰謀論だ!」「議会は信用できない」という空気を強めてしまいます。
市民的には、少なくとも政治の中身を見せてもらえている気はしないし、蚊帳の外といった感覚。たしかに休憩時間は会議を円滑に進めるためには必要な内輪の時間なのかもしれません。
しかし、市民が本当に見せてほしいのはどうやってその結論に至ったか?なぜその人選なのか?という結論に至るまでの納得感のある経緯なのではないでしょうか。
それがあってこそ透明度の高い信頼される市議会という気がします。
海外の議会との違い
欧米の地方議会では、議長選や人事配分の際に議場で推薦演説や反対理由を堂々と述べるのが一般的です。
対立が表に出るのは当然のことであり、それこそが民主主義の透明性重視の姿勢表明とされています。まさに「市民に見せてナンボ」。
日本の「裏で決めて、表は儀式」というスタイルは、むしろ国際的には特殊だと言えるでしょう。
「見せない文化」をどう変えるか
今回議会中継を視聴していて、そもそも議会中継は「公式記録として残すもの」であって、「市民に見せるもの」ではないのだなと実感しました。(画質も悪すぎる…)
例年最初の臨時会では、円滑な議長副議長決定のため、会派間で議会前に水面下調整がされています。今回も票が1人に集中している点から、例にもれず例年通りの事前調整があったはず。
議長選出選挙に前半約30分、副議長選出選挙に休憩後の後半で約30分。会議時間は合計1時間なのに、間の休憩は4時間。いくらなんでも会議に対しての休憩が長すぎるというのが一般市民の感覚ではないでしょうか。
(それでも1日で議長・副議長の選出が終わったのは数年ぶりでスムーズだったようです※議員SNSより。一般的に初回臨時会はまっさらで1日で終わりやすい、2年目以降は会派間の力学が働いて揉めやすいとか。)
市民はきれいなところだけ観たいわけではありません。むしろ見せたくない泥臭い部分を見せてもらうことで、信頼感が湧く部分もあるのでは。
以前SNSで市長や市議会議員の一人が、市議会や政治に関心を持ってほしいと書いていましたが、本当に市民に興味を持って政治に関わってほしいと思っているならば、
市民に見てもらえるような親切な時間配分や発信方法を考えてほしいものです。(今のままだと関心を持って視聴してみようと思った市民の出鼻をくじいてしまうと思います)
いきなり欧米のように、全てを公開しろとは言いません。日本には日本に合ったやり方もあります。でも、
- せめて休憩中に少なくともどういう論点で調整しているのかを説明書きで提示しておく
- 海外のように、議場において、候補者推薦の演説をする
など「見せる努力」を少しずつ積み重ねることはできるのではないでしょうか。そうした積み重ねによって市議会は市民にとって信頼できる、より開かれた存在になっていくはずです。
市や市議会が、あらゆる面から市民ファーストの政治ができれば、奈良市に住みたいという人がきっと増えます。
そして奈良市民が増えれば財源も増えて、より魅力的な街へ変貌を遂げていくのではないでしょうか。
まとめ
市議会が不信感を持たれる最大の理由は、裏で決めて市民に見せない「文化」にあります。
効率よりも安定を優先してきた結果、かえって市民の信頼を失っているのです。
鹿の写真の裏で進む交渉を、市民にももう少し見せてほしい。
「見せない文化」から「見せる政治」へ。そこにこそ議会改革の出発点があるのではないでしょうか。