2023年7月23日地蔵盆の日に行われた「奈良きたまち六地蔵めぐり」というイベント。無料にも関わらずディープな内容で、奈良の歴史を知ることができ、また一つ奈良が好きになりました。
この記事では1記事目で紹介しきれなかった地蔵巡りの続きをご紹介します。
奈良きたまち六地蔵めぐり後半の様子
前半の記事では、奈良の地蔵盆について、奈良きたまち六地蔵めぐりのイベント詳細について、転害門地蔵尊~東大寺念仏堂までをご紹介しました。
今回の記事では、五劫院・夕日地蔵、北向地蔵と佐保川地蔵、普光院、念聲寺の地蔵尊をご紹介していきます。
五劫院(みかえり地蔵尊)
念仏堂を出たら、再び大仏殿裏の道に戻り、正倉院横の砂利道を通り若草山ドライブウェイ方面にむかい、住宅街の中にある五劫院(ごこういん)へ。
こちらはご本尊の秘仏五劫思惟阿弥陀菩薩坐像=通常・アフロ地蔵で有名なお寺ですが、境内にも地蔵尊が多く祀られています。
ものすごく長い時間考え続けてアフロのような髪型になったニャ!
普段は特別公開期間中以外は基本的に非公開ですが、今回のイベントではこの御本尊も特別に拝ませていただけることに。お寺のお坊様に説明もしていだけました。(ありがたい…)
地蔵盆のこの日は、たくさんの提灯が掲げられて華やかな雰囲気。地域の方々に愛されているのを感じます。
こちらではお寺の近所に住むというフレッシュな高校生の男の子が、境内の地蔵尊について説明してくれました。
奈良五劫院さまの見返り地蔵さま(左)
またお逢いしに伺いたいものでございます(^人^)#不要不急の石仏 pic.twitter.com/FbxY6DwtoK— むとうえり (@erimutchi) May 9, 2020
お墓につながるお堂の右奥の少し奥まった通路には、「見返り地蔵尊」の姿が。(写真をとりそこねました汗)
舟形の光背がある石仏の地蔵尊で、少し左を向いて見返るような姿をされているのでそのように呼ばれているそうです。
まさに、救いを求める衆生を振り返り救済する慈悲深いお地蔵様の姿ですね。立ち姿の見返り地蔵尊は成人女性と同じぐらいの大きさがあり、なかなか迫力があります。
ここから般若寺方面に向かう坂道を少しのぼり、次の夕日地蔵尊を目指しました。
かなりの酷暑だったので、途中にある協賛の「珈琲やかじせん」が特別に開放され氷水をグラスにサービスでいただけることに。
スポーツドリンクを飲んでもなかなか身体は冷えなかったのですが、氷水は効きました!スッと身体が楽になったので、夕日地蔵尊までがんばれました。感謝です!
最初にいただいた地蔵巡りのパンフレットは、この「かじせん」さんが発行したもの!かじせんさんや、観光案内所で無料でいただけるので是非ゲットしてください。
夕日地蔵尊
夕日地蔵尊は、史跡・北山十八間戸(鎌倉時代のハンセン病患者・隔離養生施設)のすぐ上方にある道路沿いの石仏地蔵尊。
少し奥まっていて建物の陰に隠れているので遠くからは見えませんが、近づくと高さが2.4メートルほどもありかなり大きいです!にっこりと目を細めるような優しいお顔が印象的。
夕日の方を向くように西向きに立っていて、夕方には夕日色に染まるためこの名前が付けられたそうです。夕日の時間にも訪れてみたい場所ですね。
北向地蔵と佐保川地蔵
再び「かじせん」がある道路まで戻り、かじせんの道路をはさんで向かいにある提灯やさん横の小路を入るとすぐに見えてくるのが「北向地蔵」。
小ぶりなお地蔵様が可愛らしい屋根付きの小さなお堂に前掛けを付けて並んでいました。掲げられているあざやかな提灯は、手前にあった提灯屋さんのものだそうです。
こちらでは地蔵盆当日ということで、町内の方が訪れた子供たちにお下がりのビニールに入ったお菓子を配っておられました。我が子もいただいて、満面の笑み。
続いて路地を抜け左に曲がり、また次の左に入る路地に進むと「佐保川地蔵」が。お地蔵様の祠とともに二社の社があるのが印象的です。
こちらでも北向地蔵と同じくお菓子のお下がりをいただきました。
@JPNTPLGKEN 7-佐保川地蔵尊。お地蔵さんの隣、右の祠が天棚機(たなばた)姫神社=佐保姫神社だそう。(左は桜七所明神社) pic.twitter.com/djMfsSvhFF
— 髙田・ピエール=リトバルスキー (@JPNTPLGKEN) October 18, 2014
こちらで祀られているのは主に近くを流れる佐保川の川底から見つかった地蔵尊で、修復により胴体と頭の色が違うお地蔵様や赤さびのついたお地蔵様の姿も。
佐保川地蔵は、このあたりの地蔵尊の中では規模が大きいように感じました。
再び路地を戻り佐保川にかかる小さな橋を渡ると、正面の斜面の上にも地蔵尊を祀る場所が。普段は扉が閉められ近くで拝むことはできませんが、この日は地蔵盆で特別に参拝可能となっていました。
(あまりの暑さのため歩くのに必死で写真は撮れませんでした泣)
さらに道なりに進むと出てくる、新しい家の建つ住宅街の奥にも地蔵尊があるのだそう。他にも次の善光院までに地蔵尊がたくさん。
日々の散歩で歩いている道でしたが、まだまだ知らないことだらけです。(汗)
普光院(地蔵菩薩立像)
少し歩いて、佐保川沿いにある普光院へ。
こちらは観光寺院ではなく、地域に根差したお寺さんなので建物中に入るのははじめてでしたが、こちらにも堂内に鎌倉時代の地蔵尊(木造立像)が祀られていました。
奈良地蔵盆、普光院の歩き地蔵を始めてみる
元白毫寺あたりにあった地蔵で、法蓮町に持ってこられてから、多分当屋講のことだと思うけどあちこちの家を祭礼毎に移動してたので歩き地蔵と呼ばれたらしい
流石に大変になって、普光院を作って収めたとのこと
森川杜園の墓もあった pic.twitter.com/VVcwyMiQWU— こちずふぁん (大塚恒平) (@kochizufan) July 23, 2022
有名な奈良人形師・森川杜園(江戸~明治時代)のお墓も入って左側にあり、石碑には読み取りにくいですが辞世の句も刻まれていました。
念聲寺(船後光地蔵尊)
最後はまたまた少し歩き、東大寺大仏殿へ向かう焼け門につながる道に戻り道沿いにある「念聲寺(ねんしょうじ)」へ。
こちらでは地蔵盆のため夜に数珠繰りや紙芝居などの行事があるようで、にぎやかな雰囲気でした。堂内からはお経のような和歌のような合唱の声が聞こえてきました。信仰を感じます!
念聲寺は道路沿いにも地蔵尊が祀られていますし、門をくぐった中にも境内にも地蔵尊のお姿が。
境内のお地蔵様は舟形の光背がついた「船御光地蔵尊」で、端整な顔立ちが印象的。安産や延命の御利益があるそうです。
普段は受付していないという御朱印を、このイベントのため特別にいただくことができました!感謝です。
そして、数珠繰りも特別に体験させていただけました!大勢が円になって座り、大きな大きな数珠をみんなで持ち読経に合わせてぐるぐる回します。
時々回ってくる房をひたいにつけるとご利益があるのだそうですよ。
約2時間のきたまち地蔵尊めぐりでしたが、これが無料でいいの?というぐらい充実した内容で、ありがたく本当に参加して楽しかったです!
きたまちのお地蔵様は地域に根付き愛された仏様だった
今回巡ったお地蔵様以外にも、きたまちの町中を歩くと、当たり前のように道端で祀られているたくさんのお地蔵様たちの姿が。
どのお地蔵様もしっかりと手入れされ、大事にされているのが見て取れます。地蔵盆当日に歩くと、町内の方々によって地域に根差して大切に守られているのだなと実感できました。
普段は仏教徒であることを忘れがちですが、こういう行事を見ていると、やはり仏教が私たちの生活や心の根源にあるのだなと感じます。
地蔵盆はパンデミックの影響でここ数年縮小開催傾向にありますが、地域の高齢化もありかつてのような規模での存続が難しくなっているのも現実。
この素敵な文化が、どうにか次の世代まで絶えることなく存続していくことを願います。
まとめ
観光地である奈良は把握できないぐらい様々なイベントがあり、今回のような素敵なイベントも埋もれがちですが、逆をいえば探してみればそれだけ素晴らしいイベントにも出会えるということ。
奈良きたまちには、奈良公園周辺の主要観光地となっている「ならまち」とはまた違った魅力が満載です。のんびり散策が楽しい場所なので、是非地蔵巡りがてら歩いて観光してみてくださいね。