寒い2月がようやく終わり3月になると、ようやく庭仕事が楽しい時期に!この時期最初に庭に姿を現すのが、万葉植物で薬草でもあるアミガサユリ(バイモ)。
毎年春の訪れを告げてくれる花で、これが咲くと春になったなぁと思います。
庭に地植えで毎年放置でも元気なアミガサユリですが、今年は改めて育て方や増やし方、毒性などを調べてみたので、シェアします。
アミガサユリ(バイモ)とは
アミガサユリ基本情報
- ユリ科バイモ属
- 原産国…中国
- 多年草
- 和名…アミガサユリ(網笠百合)バイモ(貝母)
- 草丈…40~60センチ
- 開花時期…春(3~5月)
- 花径…3~4センチ
- 花言葉…「母の優しさ」「謙虚な心」
見た目はひょろっと背が高く、素朴な野草らしさあふれるユリ。花は釣鐘状です。球根で増える多年草。江戸時代に薬草として中国から伝来したそうで、漢方薬としても用いられています。
しかし下向きの花に近寄ってよ~く中をのぞいてみると白黒の網目状の模様が!はじめてみたときは毒々しくも思えました。細い葉っぱはくるんとカールしていてかわいらしいです。
日本原産の似たような植物にコバイモがありますが、コバイモは1茎に1花でバイモは1茎に多数の花をつけるので見分けられます。
中国から帰化の後、山野に自生していた植物なので、場所は半日陰の方がお好き。我が家の庭では一日中半日陰の場所にあるのですが、何も世話をしなくても毎年律儀に生えてきてくれます。
万葉集にも登場する植物
春日大社の参道には、万葉集に出てくる植物を育成・展示している萬葉植物園があるのですが、そこにもアミガサユリがありました。由緒ある植物だったことにびっくり。(汗)
アミガサユリは球根が2枚の貝殻のようなカタチの鱗茎で母と子が寄り合わさった姿に似ていることから、万葉表記では「はは」と呼ばれているそうです。
時々の 花は咲けども 何すれそ 母とふ花の 咲き出来ずけむ
(季節ごとに花は咲くのに、どうして母という花は咲かないのだろうか)
丈部真麻呂(巻20-4323)
こちらは現在の静岡県から国防のため遠く離れた九州方面に3年間の軍役に出た防人が、故郷の母を恋しく思い詠んだ歌。
「母という名前の花が自分がいるところに咲いたら、それを母と思ってがんばれるのに…」
といった意味合いだそうです。
アミガサユリは、万葉集の時代から「母」を象徴する花として親しまれてきたのですね。そう思うと庭に繁殖するアミガサユリを見る目も変わってきます。
しかしここで疑問が浮上。ネットで調べていたらアミガサユリが中国から伝来したのは約300年前の江戸時代とありましたが、この歌は1300年以上前の奈良時代に詠まれた歌です。
ここで詠まれたアミガサユリは、もしかしたら日本原産のコバイモのことかもしれませんね。知っている方がいたら教えてください。
アミガサユリの育て方
我が家は地植えの無管理で育てていますが、鉢植えで楽しむこともできます。寒さには強いですが熱さには弱いアミガサユリ。そこだけ注意して管理すれば、育てるのが難しい植物ではありません。
鉢植えの場合
- 置き場所…半日陰
- 用土…水はけと水持ちの良い土(例…赤玉土6:鹿沼土2:桐生砂2)
- 水やり…用土の表面が乾燥したら(芽出しの頃は多めに)
鉢植えの場合、用土は配合が面倒であれば市販の山野草用や球根用の培養土でもOKです。
地植え(庭植え)の場合
- 植え付け…半日陰(直射日光が長時間当たらないところ)
- 用土…腐葉土と元肥を混ぜる(水はけと水持ちの良い土に)
- 水やり…降雨のみ
植え付けは木の根元など、木陰になるような場所がベスト。日当たりが良く乾燥しすぎるとうまく育たないようです。環境が合えば我が家のように放置で勝手に育ちます。(笑)
暖地の場合は球根が乾燥したり腐ったりしないように掘り上げるのがおすすめです。奈良にある我が家では掘り上げの必要はありませんでした。
植え付けは、芽出し&肥料は
球根の植え付けは9~10月頃の休眠期に行いましょう。
鉢植えの場合は4~5号鉢に4~8球、土の表面から2~3センチの浅めで植え付けます。
植え付け時、緩効性の化学肥料を。
アミガサユリは病害虫としてナメクジやアブラムシがつくことがあるのでオルトラン粒状も混ぜておくと安心。
発芽後は、2週間に1回程度液肥をあげましょう。芽出しの頃は多めに水やりをします。
植え替えは
植え替えは植え付けと同じく9~10月の休眠期に行います。植え替えの頻度は2~3年に一度程度です。
花後&休眠中のお手入れは
花後は花がら摘み、枯れた茎や葉を取り除き、きれいにしてあげましょう。そしてお礼肥で株元に緩効性化学肥料を置きます。
鉢植えの場合、休眠後1か月、葉が枯れるまではかなり薄めにした液体肥料をあげると良いです。(月2回程度)真夏の休眠期は半日陰に置き土が乾燥したらかなり控えめに水やりをしてください。
増やし方は
アミガサユリの増やし方は2種類。
- 球根の分球(腐らないように梅雨を避ける)
- 実生(5月中旬から下旬に種が熟すので、その頃に採取し植える)
球根の分球が手軽簡単だと思います。アミガサユリは花が終わり休眠期に入ると地上部はきれいになくなります。5月頃は他の植物の世話でも忙しくなり、種を取るのを忘れがちになる可能性も。
ちなみに我が家ではあんまりにも裏庭で増えるので、花が咲く前のアミガサユリを掘り起こして表の庭の日陰に植え直しました。(園芸初心者の非常識でごめんなさい汗)
それでも根付いたらしく、今年は表庭からもアミガサユリの葉っぱがわさわさ出てきました。環境さえ合えば増える、強い植物のようなのであまり慎重にならずとも増えるかもしれません。
アミガサユリはネット通販でも購入は可能のようなので、近くに売っていないけれど育ててみたい方はチェックしてみてくださいね。
我が家のアミガサユリ
冬の間は、100パーセント放置の我が家の裏庭。3月が近づいてくると、雑草と共にアミガサユリの葉っぱが毎年忘れることなく出てきます。
築約100年の古民家の我が家、先住していた方はお茶の先生をされていたそうで、庭には他ではあまり見ないような茶花が多数植えられています。
裏庭のアミガサユリもおそらく茶花として使用するために、その方が育てていた植物。特にお世話はしていないのですが、環境に合っているらしく毎年どんどん増えています…。
2月末の様子
出始めたところはこんな感じ。庭の各所に群生しています。
もう少し成長したものだと、こんな感じ。かなり葉っぱがわさわさしてきました。
3月の様子
3月になり気温が少し上がると急成長。フキの花と一緒に毎年裏庭の半日陰地帯を埋め尽くします。
はじめはこぢんまりとして小さくまとまっていた葉っぱたちですが、あるときから急に縦に成長をはじめ40~60センチになります。
それぞれの年の気温によってマチマチですが、大体3月中旬には開花しはじめます。
写真は2歳ぐらいの息子で身長80センチぐらい。比べてみると、かなり背丈が高いのが分かると思います。
スッとした立ち姿が美しいアミガサユリ。上のインスタ画像の素敵なお庭のように庭の手入れをきちんとしていたら、庭の名脇役としてもっと見栄えが良いのだと思います。(汗)
例年3月後半には満開に。下向きに花をつける控えめな花ですが、外から透けて見える中の模様がなかなか素敵です。
華やかさはない植物ですが、奥ゆかしい可憐さがあります。日差しが差し込むと何ともきれい。
とにかく増えまくり、庭がアミガサユリだらけになるので開花時期には毎年抜きまくっています。しかし球根で増えるタイプなので全く問題なく、毎年勝手に咲きます。
我が家では抜いた花はガラスの花瓶にまとめて差して飾っていますが、素朴な花なので、茶花はもちろん寄せ植えの脇役としても活躍。
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平地では珍しい花なので、近所の人にプレゼントすると喜ばれます。
毒性はある?ペットは注意かも…
乾燥したアミガサユリの鱗茎は「貝母(ばいも)」という漢方薬でもあります。咳を鎮めたり、痰を切ったり、膿出しや利尿効果があるそうです。
一方で草全体にアルカロイドが含まれていて血圧低下・心筋神経麻痺や呼吸麻痺を起こす副作用もあり、呼吸数や心拍数が低下してしまうこともあるので服用量には注意が必要な薬。
アミガサユリが咲く時期、飼い犬(トイプードル)のシロを庭に出してしばらくして戻したのですが、その後しばらく酔っ払いのように脚がおぼつかずフラフラになってしまったことが。
熱中症の時もそんな症状になるのでもしかしたら熱中症かもしれませんが、熱心ににおいをかいでいたアミガサユリの毒性のせいという可能性もあります。
その事件以来、念のためアミガサユリの季節には、犬を庭に出さないようにしています。人間は大丈夫でも犬にはNGという植物はけっこうたくさんありますよね。犬を飼っている方は、ご注意ください。
まとめ
春の訪れを告げるアミガサユリは、すらっとした立ち姿で風に揺れる姿が風流で、まさに万葉植物といった風情があります。上手に使えば庭を引き立てる名脇役にもなれますし、育て方も簡単。
環境が合えば毎年勝手に出てきて花を咲かせてくれる強い植物です。ぜひ育ててみてくださいね。