奈良のこと

お水取りの先駆け行事・竹送りに参加してみた。どんな行事?当日の様子

東大寺二月堂のお水取りは知っていても「竹送り」に聞き馴染みのある方は少ないと思います。毎年2月11日にお水取りのために京都府京田辺市方面から二月堂へ竹を寄進する行事が竹送り

2024年度は久しぶりに地域住民らをはじめとした一般客も参加して大規模に行われました。実際に参加して竹をかついできたので、当日の様子をお伝えします。

お水取りの先駆け行事・竹送りに参加してみました

お水取りのお松明

二月堂の舞台上を火を灯した籠松明(かごたいまつ)を持った練行衆が走る姿が有名な、東大寺二月堂のお水取り(修二会)。春の訪れを告げる、全国的にも有名な東大寺を代表する伝統行事です。

舞台を走る練行衆が持つ、あの籠松明の持ち手は長くて丈夫な竹製

二月堂茶屋内の松明展示
奉納された竹は、写真のような松明に加工されます

籠松明を含めた修二会中で使われる真っすぐで長い真竹を京田辺市から二月堂へ寄進する地域住民らによる行事が竹送りで、毎年2月11日に実施されるお水取りの先駆け行事の一つです。

2019年以降は感染症対策のため数年間関係者のみの実施でしたが、今年はほぼコロナ渦以前の規模で復活!

竹送り日程は、毎年年2月11日の午前中から昼過ぎにかけて

2024年の2月11日・日曜日、奈良市転害門から東大寺二月堂まで人力で竹を運ぶ竹送りの行事に参加してきたので、この記事ではその様子をお伝えします。

竹送りとはどんな行事?

竹送り奉納の札

先に軽く触れましたが、竹送りとは、3月に行われる東大寺二月堂の伝統行事・修二会(お水取り)で使われる松明(たいまつ)用の真竹を寄進する行事

寄進元は京都府京田辺市の山城松明講社(やましろたいまつこうしゃ)です。

古くから山城地方(現京田辺市のあたり)の住民による東大寺への竹送りはあったそうですが、戦後一度は途絶えてしまったのだそうです。

それを昭和53年に有志を募り復活させたのが山城松明講社なのです!まず、行事の流れをざっと説明します。

京田辺市にある大御堂観音寺近くの竹やぶで切り出した根付きの真竹は奈良市の東大寺転害門までまず車で移動。

転害門と太鼓

転害門でのお迎え行事の後、山城松明講社と有志の方により徒歩で南大門・大仏殿前を経由して東大寺二月堂まで人力で運ばれ、僧侶により二月堂で祈祷、竹は堂前に安置されます。

昨年以前の二月堂前に集まった奉納竹
お水取り用にと他にも全国各地からたくさんの真竹が寄進されています

この後お水取りまで二月堂到着後裏参道寄りの回廊前に立てかけられた竹は、行き交う人々に「あぁ、もうすぐお水取りか、春が来る」と季節の移り変わりを知らせる目印にもなっています。

人力で二月堂まで竹をかついでいく人の多くは地域住民をはじめとした一般の人々で、老若男女、さまざま。

奉納竹と人

この竹送りは隣接する京都府京田辺市と奈良市をつなぐ地域行事という一面もあり、人と人とのふれあいや親睦をとても大切にした行事であるためです。

そんな行事なので誰でもウェルカムな雰囲気で、どなたでも当日飛び込み参加OK!国内外問わず観光客でも関係なく参加できるので、もし出くわしたら是非参加してみてくださいね。

当日の様子

転害門前の様子

寄進元の山城松明講のある京田辺市の方では早朝から竹の掘り起こしや道中安全祈願などの行事がありそこからでも参加可能です。

が、竹を人力で二月堂まで運ぶのは奈良市きたまちにある転害門(てがいもん)から

奈良時代から変わらずそびえ立つ国宝である転害門。東大寺創建の際、九州の宇佐八幡宮から氏神様をお迎えした門なので寺門なのにしめ縄がかけられています。

この転害門から参加や見物する人がとても多い印象です。

ちなみに

10時30分ごろ転害門に掘り起こした真竹が到着しお迎え式が実施されます。そのため10時30分前には多くの人がすでに転害門前広場に集まっていました。

ざっくりとした当日のスケジュールは下記の通り。

当日の簡単な流れ

  • 7:30…大御堂観音寺にて二月堂竹送り受付開始
  • 7:45…竹林に移動し寄進竹2本を掘り起こしかつぎ運ぶ
  • 8:40…普賢寺ふれあいの駅で小休憩約10分
  • 9:10…大御堂観音寺にて道中安全祈願
  • 9:30…大御堂観音寺出発
  • 10:30…転害門前広場到着・お迎え式
  • 11:00…転害門前広場出発・竹3本かつぎ徒歩で二月堂へ
  • 11:30…東大寺南大門前で大八車(残りの竹)と合流 
  • 大仏殿前で小休憩
  • 0:00…東大寺二月堂到着

※参考資料…二月堂竹送り日程表(当日配布紙)

転害門での和太鼓演奏

我が家が到着した10時40分頃には門下で和太鼓の演奏がされていました。行事の雰囲気にぴったりな素晴らしい演奏です!

その後すぐに行事の開催挨拶が関係者代表の方々によってはじまり、行事について簡単に説明がなされました。

ふるまいぜんざい

その後和太鼓の演奏と共に、ぜんざいのふるまいが!200食ほど用意されており、集まった人々に無料で提供されました。(ありがたい…)

小豆のたっぷり入った甘い汁に焼いたお餅が一つ入っていて、身も心も暖まるありがたいふるまい!ゴミの回収もその場でしていただき、感謝が尽きません。

お昼ご飯前でお腹も空いていたのですが、ぜんざいのおかげで力が湧き二月堂まで竹をかついで行けました。

竹をかついで出発

11時頃、3本の寄進竹が転害門前を出発。転害門広場に集まった人々の中から竹を運びたい人が運ぶ竹の周りに集まり竹を担ぎ上げます

竹は根元の方が重いので我こそはという力に自信のある方が、前方の根元部分を持ちます。私は一番後ろにそっと手を添え歩きました。(苦笑)

竹送りはボランティア主導の行事です。途中ケガや事故があっても自己責任となるので、参加者はスタッフの指示に従って安全に気を付けながら進みましょう。

歩道を竹をかつぎあるく人々

そのまま歩道に出て大通り沿いをひたすら進み、バスターミナルのある交差点を曲がり東大寺・若草山方面に進みました。

竹を運んだトラック

途中残りの5本の竹(この後合流)を運び終わり戻っていく竹送りのトラックとすれ違いました。

転害門から最短距離で行くならば大仏池を通り大仏殿裏手から続く二月堂裏参道の石畳を進めば良いのですが、遠回りして表玄関である南大門から大仏殿正面を通っていくのがさすが、礼儀正しいと敬服。

せまい歩道をすれ違う人々に気を付けながら進みます。距離が長くだんだん竹に添えている腕が疲れてくるので時々腕を交換しながら皆さん進んでいました

にぎやかな参道を進む竹送り

普段から観光客でいっぱいの東大寺南大門前の石畳から大仏殿方面に進むと、なんだかお祭り気分。観光客の方々もなんやあれといった感じで眺め写真を撮っていました。

南大門を通過する竹

南大門の急な石階段は迂回するのかと思いきや、そのまま直進!礼儀正しくきちんと門をくぐって進みます。

見ているだけでも楽しいでしょうが、実際に参加して参加者と心を一つにして一緒に竹を運ぶのは、なんともいえない一体感があり格別なものです。

大仏殿前で休憩

南大門前で竹を下ろし、トイレ休憩をかねた10分ほどの小休憩。ここから飛び入り参加する観光客の方もチラホラいらっしゃるようでした。

大八車の竹合流

3本の竹の後方からは、行事に参加していた小学生らが主となって引っ張る5本の竹をのせた大八車もやってきました!

休憩が終わるとまた竹をかつぎ、出発。二月堂を目指します。先ほどは竹の後方で軽すぎ申し訳なかったので、今度は竹の根元に近い先頭の方を持ちました

鐘楼前の階段を進む竹

大仏殿回廊を左に曲がり裏参道に行く手前にある石階段を上がります鐘楼の奈良太郎へ続く道。比較的長い階段ですが、他の参加者と気持ちを合わせてゆっくりと上がっていきます。

大八車を引く子供たちは車道となっている坂道を「わっしょい、わっしょい」という掛け声で団結して引っ張ってきていました。

二月堂前の石段をのぼる竹

鐘楼を通り過ぎ左手に曲がり、お土産店の並びを通り過ぎ最後の石段をまたのぼり、二月堂前の広場へ出ます。ようやく二月堂の姿が!

二月堂前におろされた竹
山城松明講が奉納する竹は全部で8本でした

二月堂前の大階段で一度竹をおろし、写真撮影などを行いました。写真の通り寄進する真竹はまっすぐで、とてもきれいに根を掘り起こしてあります。

しっかりと管理・手入れされた竹林でないと、お水取りで使えるこれだけ真っすぐで質の良い竹は育たないそうです。

最近はそういった竹林が減少しているので、奉納用の竹を用意するのも大変なことなんだとか…。

立てかけられて安置される竹
しっかりと紐で固定します

再び竹をかつぎ反対側(二月堂裏参道側)の回廊前へと竹を運び、立てかけました。お水取りで使われるまでここに安置されます。

8本の竹送りで奉納した竹

拍手の後、簡単な挨拶をして解散となりました。我が家は二月堂を参拝した後帰宅。

東大寺二月堂前

関係者の方はこの後二月堂の御本尊前にて僧侶の方とご祈祷をされていました。

全てボランティアの手で行われている、この竹送り行事。この日のために資金の調達や大変な準備を協力してされていたと思うと本当にありがたく頭が上がりません。

これからも絶やさずに存続させたい素晴らしい行事でした!

竹送りに参加した感想

修二会案内の看板

地元に住んでいて今まで何回もお水取りは観覧に行ったことがありますし竹送りも転害門まで見に行ったことはありましたが、参加したのは今回がはじめての我が家。

今まで見ているだけでも満足していましたが、実際に行事の中に参加してみるとまた見えてくるものも違って高揚感がありました

知らない人と一緒に運ぶ竹

一緒に竹をかついだのは、ほぼ全く知らない人同士。いわゆる他人です。

ですが「修二会のために二月堂まで竹を運ぶ」という共通の目的をもって一丸となって進むのはコロナ渦で人と人との直接のふれあいが少なくなった近年ではなかなかない機会で、心温まる経験となりました。

そして修二会(お水取り)は東大寺というお寺の行事ですが、多くの地域住民や日本国民によって支え続けられている行事でもあるのだな、と実感。

過去の修二会での竹
過去の修二会で二月堂前に立てかけらた竹。すごい数です!

長期間昼夜問わず修行が続く修二会には、多くの松明の灯りが必要。そのため修二会前には、今回運んだ竹以外にも全国からたくさんの竹が奉納されるそうです。

練行衆が持って走る籠松明に使われる竹は、この中から選ばれし11本

なので今回運んだ竹が全て練行衆が持つ籠松明用になるわけではなく、修二会中のどこかで用いられる松明なるようです。

それでももしかしてあの舞台で使用されているのが、私が運んだ竹かも?と思うとうれしいです!

終わったら汚れていた竹
運び終わった後は、手が真っ黒になっていました

そして何より汗水流して竹を運んだことにより、今年のお水取りのお松明は例年以上に感慨深く拝めそうです。

まとめ

お水取りのための竹を奉納するのが目的の竹送りですが、地域と地域の人々をつなぐ心温まる交流行事でもありました。

誰でも飛び入り参加OKという行事はなかなかないですし、一般の方でもお水取りに関われるチャンスでもあります。機械があれば是非参加してみてくださいね。

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